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ヨーロッパ北極圏の先住民、サーメ

 多様な民族が存在する北極圏。その中で、スカンジナビア半島北部からコラ半島に至る地域に居住している先住民がサーメ(samer)です。彼らの住んでいる地域は彼らの言葉で Sápmi(サプミ—> 北部サーメ語、サーメ語は場所によって異なります)と呼ばれるため、日本語ではサーミと訳されています。「サーミの血」というスウェーデンのサーメ女性の半生を描いた映画があったことを覚えている方もあるかと思います。

 サーメの歴史は古く、古代ローマ帝国時代にはフィンという名前で記録が残っています。サーメ人はラップ人という名前でも知られていますが、ノルウェーやスウェーデンではサーメの蔑称として使われていたことから、スカンジナビアではラップという言葉は用いません。サーメは基本、狩猟採集の生活を送っていましたが、海辺に住む海のサーメやコラ半島の東のサーメは半農半漁、山のサーメはトナカイの遊牧を生業とするなど地域によって生活形態は少しづつ異なります。季節によって遊牧地間を移動するサーメは、遊牧の方法や場所を siida(シーダ)と呼ばれる組合で決めており、siidaはサーメの重要な組織の一つです。近代になって国境がSápmiを分け隔て、サーメ人もノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの4カ国に分かれて住むようになり、国境を越えてのトナカイの移動も制限されるようになりました。しかし、ノルウェーとスウェーデンの間では未だに国境をまたいでの移動は可能で、夏にはスウェーデンのトナカイがノルウェーに、冬にはノルウェーのトナカイがスウェーデンへと移動しています。(写真はファッション雑誌のカバーとなったノルウェー・カウトケイノのサーメ衣装)

 所属する国は分かれてしまいましたが、1992年にはこれら4カ国のサーメが集まってサーメ議会を開き、2月6日をサーメ国民の日としました。翌年1993年の国連先住民族の年から、サーメ国民の日が祝われるようになり、毎年この時期には各国でサーメ文化にちなんだイベントが開催されます。トロムソでは街の大通りを使ったトナカイレースが催されるのですが、今年はコロナのため中止、サーメ語のセミナーなども中止・縮小が余儀無くされています。スウェーデンのヨックモックでのサーメ市場はネットで参加できるので、興味のある方は覗いて見てください。https://jokkmokksmarknad.se/program/