北欧とひとくちに言っても、スカンジナビア諸国とフィンランドは言語も文化も異なり、スカンジナビアでもデンマーク・スウェーデン・ノルウェーで国柄が異なります。さらにノルウェーの中でも地域によって大きな違いがあり、首都のオスロは多くの人とモノが集まる東京に、ハンザ同盟で栄えた西部の都市ベルゲンは独特の文化が息づく大阪に似ています。主要都市の集まるノルウェー南部からすると、人口の少ないノルウェー北部は未開の土地という印象が持たれていましたが、実際には、北ノルウェーには南部には見られない魅力が多く存在します。

 北極圏に属する北ノルウェーは、その特異な自然環境に加え、多様な文化に富んだ地域です。北ノルウェー人の気さくで開放的な気質は、現在でも色濃く残る先住民族であるサーメの文化やフィンランド移民の文化、ロシア交易から生まれた独特な文化からできたものと言えるでしょう。まだまだ知られていない北ノルウェーの豊かさを探しに来ませんか?

自然

ノルウェー北部は北極圏に属します。夏には太陽の沈まない白夜、冬には太陽の代わりにオーロラが舞う世界です。北極圏の多くは永久凍土に覆われた低地で、森林が生長しないツンドラ気候ですが、暖流の影響を受ける北ノルウェー沿岸は、西岸海洋性気候という比較的温暖な気候に恵まれ、平原のほか山岳地帯も存在します。森林限界が400mと低く、裏山に登れば日本の高山に匹敵する自然が見られます。

スカンジナビア北部からロシア北西部にかけては、古くからサーメ(サーミ)人と呼ばれる先住民族が暮らしています。ラプランドと呼ばれるこの地域が国境で分断されたのちも、互いに連携をとって昔ながらの習慣を守っています。フィンランド移民はクベン人と呼ばれ、その独自の文化は現在でも細々と受け継がれています。北西ロシアとの交流が盛んな時期もあり、トロムソの街ではノルウェー語とロシア語を混ぜた「ピジン語」が使われることもありました。

暮らし

農作が難しい北極圏では、ブルーベリーやコケモモなどのベリー類が大切なビタミン資源となります。夏から秋にかけて人々はバケツいっぱいベリーを集め、長い冬に備えます。タラ漁の本場では、タラの舌や内臓料理があり、クリスマスにはアルカリ漬のタラをもどしてベーコンの脂と一緒に食べます。編み物はノルウェー全国で盛んですが、北では特に冬の海で働く漁師さんのためのニットが多くあります。